EVENT REPORT · 2026.10.10

国際ワークショップ「量子 × 音楽」開催報告

量子技術と音楽・創造的表現に関する講演、研究発表、演奏を実施

開催日時
2026年10月10日(土)14:00–18:00
会場
神戸大学 情報価値創造教育棟 1階 V105
形式
対面開催・国際インタラクティブワークショップ
主催
神戸大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻 EP4A(相馬)研究室
協力
一般社団法人 EntangleTune
後援
神戸大学国際共同研究強化事業、プリマス大学

開催概要

2026年10月10日、神戸大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻 EP4A(相馬)研究室の主催、一般社団法人EntangleTuneの協力により、量子技術・音楽・創造的表現に関する国際インタラクティブワークショップ「量子 × 音楽」が神戸大学で開催されました。本ワークショップは、量子コンピューティングと音楽・芸術表現の新たな接点を探ることを目的としたもので、科学技術分野の研究者・学生に加え、音楽や芸術に携わる方々、一般参加者など、約50名が参加しました。

プログラムは、量子コンピューティングの基礎と音楽創造への応用を紹介する講演、2件の特別招待講演、7件のポスター・デモ発表、量子コンピュータ音楽コンサートなどで構成されました。

講演・量子コンピュータ音楽システム実演(Part 1)

冒頭では、相馬聡文(神戸大学)が量子コンピューティングの基本的な考え方を紹介し、続いてEduardo Reck Miranda氏(英国プリマス大学)が量子コンピューティングと音楽創造との関わりについて講演しました。

講演に続くデモンストレーションでは、まずMiranda氏が、自身の研究グループで開発した量子コンピュータ音楽システムを紹介し、実演を行いました。その一つである「Q1Synth」では、量子ビットの状態をブロッホ球上で操作し、その状態や測定結果を音響合成に反映させる仕組みが紹介され、参加者も各自の端末からシステムにアクセスし、実際に操作を体験する機会が設けられました。

続いて、相馬とMiranda氏が、遠隔地の実機量子コンピュータを介したチェロとシンセサイザーによるインタラクティブなセッションを実演しました。チェロの演奏信号をオーディオインターフェースから取得し、Pythonによるリアルタイム信号処理を経てMIDIインターフェースからMiranda氏のシステムへ送信することで、海外に設置された実機量子コンピュータとのリアルタイムな連携を実現し、その量子計算結果をシンセサイザーの演奏に反映させました。

特別招待講演(Part 2)

2件の特別招待講演では、安藤大地氏(東京都立大学)が「AIによる音楽書法の探索」と題し、AIによる和声進行や作曲技法の扱いを含む、音楽書法の探究について講演しました。また、余田有希子氏(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)は「空間を作曲する:マルチチャンネル音響による音楽表現の探究」と題し、音の配置や移動、建築空間の音響特性を作曲に取り入れるアプローチを紹介しました。

ポスター・デモ発表(Part 3)

ポスター・デモセッションでは、計7件の発表が行われました。音楽情報科学、音楽創作・表現、音響・認知研究、量子コンピュータ音楽、量子情報科学など、幅広い分野に関わる研究や実践が紹介されました。

ショートイントロダクションに続く約1時間のセッションでは、各発表をめぐって参加者と発表者との間で意見交換が行われました。また、ワークショップ全体を通じて、科学技術分野だけでなく、音楽・芸術分野の研究者や実践者、学生、一般の方々にもご参加いただきました。

量子コンピュータ音楽コンサート(Part 4)

ワークショップ後半には、Eduardo Reck Miranda氏(英国プリマス大学)による量子コンピュータ音楽コンサートが行われ、《I Don’t Know How, But I Will Find a Way》と《Collapse Variations》の2作品が披露されました。このコンサートは、Part 1のチェロを用いたデモンストレーションとは独立したプログラムです。

《I Don’t Know How, But I Will Find a Way》では、演奏中に量子コンピュータと通信し、演奏者の音楽的パターンを学習して応答する量子AIシステム「QuSing」に加え、光子の振る舞いを音に変換する「PhotonSynth」や、分割量子セルオートマトン(PQCA)を用いた音楽生成技術が活用されました。PQCAによるリズムパターンの生成には、IBMの実機量子コンピュータの96量子ビットが用いられました。QuSingによるリアルタイムの応答と、PhotonSynthやPQCAによって事前に生成された音響素材を組み合わせた作品です。

《Collapse Variations》は、量子コンピュータ上の重ね合わせ状態と測定を音楽の構成に取り入れた作品です。量子状態の準備に対応するドローン状の音響が演奏者のジェスチャーによって変化し、測定に対応する操作によって一つの旋律が現れます。量子状態の準備と測定を繰り返しながら、その都度異なる音楽的な変奏が生み出される構成となっています。

両作品では、Tiange Wang氏が制作した、量子力学の波動のダイナミクスに着想を得た映像も使用され、グラフィックスが音楽にリアルタイムで反応しました。

関連する活動について

EntangleTuneでは、量子技術を音楽・創造的表現に応用するための研究開発に取り組んでいます。本ワークショップのプログラムや発表内容の詳細は、下記の神戸大学公式ページをご覧ください。

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